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世界情報社会サミット(WSIS) フェーズ2第2回準備会議に参加して †
国連の世界会議 †
国連は、環境、人権、女性など人類の共通課題を解決するために「世界会議」を
開催している。これらの課題は主権国家の枠組みでは解決不可能であり、特に90
年代から、NGO、市民社会の積極的な参加が求められている(ことになってい
る)。
世界情報社会サミット(WSIS) †
国連の世界会議の一つとして、98年のITU総会でチュニジア政府が提案し、
2001年12月の国連総会で決定。
- 2003年12月、ジュネーブで第1フェーズ
- 2005年11月、チュニスで第2フェーズ
WSISのアクターたち †
国際電気通信連合(ITU) †
WSISのプロセスをITUが主導することへの批判
ITUは過去の世界会議のいずれにもほとんど関わらなかった(経験不足)
ITUはNGOとの協力の経験もない
(経済社会理事会は、1948年以来、NGOと協議している)
市民社会に対して否定的
UNESCO、UNDP等との合同も拒絶
2000年12月、バルセロナでの Global Community Networking conference に
おいて、ITU は WSIS の計画を発表。その際、「市民社会の全面参加」を強調
→事務総長コフィ・アナン氏の言葉を単に繰り返しただけ?
過去、インターネットの発展を阻害した
UNESCO が果たした役割 †
- 議論の場を提供
- NGOをサポート
- WSISプロセスの透明性を要求
産業界 †
International Chamber of Commerce(国際商工会議所)が事務局的な役割
NGOの参画 †
国連は数年前から「NGO」の代わりに「市民社会(civil society)」という言葉を
使うようになった。「市民社会」のカテゴリーはさらに以下のようなグループが
存在する。
Civil Society, NGO 市民社会、NGO
Academia 学界
Youth 学生、青少年
Think Tank シンクタンク
Private Sector 民間企業
Trade Union 労働組合
Parlamentarian 国会議員
Local & Regional Authorities 自治体
Creative Sector 作家、芸術家
Grant-Making Foundations 助成財団
Media メディア
WSISにおいては、国際機関、各国政府、市民社会に加えて産業界が独立したステー
クホルダーとして参加が認められたのが大きな特徴(NGOの発言権は相対的に弱まる)
市民社会コーカスおよびワーキンググループ(Civil Society Caucuses and Working groups) †
各コーカス、ワーキンググループはそれぞれメーリング・リスト(「リスト」)が
ある。
運営関連リスト †
- 市民社会全体会(CS Plenary)
- 市民社会コンテンツおよびテーマ(CS Content and Themes)
- 一般的なリスト(General list)
- 調整リスト(Coordination list)
- 起草チーム(Drafting team)
- スピーカ指名委員会(Speakers nomination Committee)
- 翻訳チーム(Translation team)
- 市民社会事務局(CS Bureau)
- 作業方法WG(Working Methods WG)
地域コーカス(Regional Caucuses) †
- アジア太平洋(Asia-Pacific)
- 西アジアおよび中東(Western Asia and the Middle East)
- アフリカ(Africa)
- アラブ諸国(アフリカのサブグループ)(Arab Countries (African Sub-group))
- ヨーロッパ(EU、候補国、スイス)(Europe (EU, Candidate Countries, Switzerland))
- 北アメリカ(North America)
- ラテン・アメリカ(LAC)
テーマ別コーカスおよびワーキンググループ(Thematic Caucuses and Working groups) †
- 都市および地方自治体(Cities and local authorities)
- コミュニティ・メディア・コーカス(Community Media Caucus)
- 文化および言語の多様性(Cultural and Linguistic Diversity)
- 電子政府/電子民主主義(E-Government/E-Democracy)
- 教育、学界および研究(Education, Academia and Research)
- 教育および学界LACコーカス(Education and Academia LAC Caucus)
- 環境とICT WG(Environment and ICTs WG)
- 財政コーカス(Finance Caucus)
- 健康とICT WG(Health and ICT Working Group)
- 人権コーカス(Human Rights Caucus)
- 先住民族コーカス(Indigenous Peoples Caucus)
- インターネット・ガバナンス・コーカス(Internet Governance Caucus)
- メディア・コーカス(Media Caucus)
- NGOジェンダー・ストラテジーWG(NGO Gender Strategies WG)
- 特許、著作権および商標WG(Patents, Copyright and Trademarks WG)
- 障害者(Persons with disabilities)
- プライバシーとセキュリティWG(Privacy and Security WG)
- 科学情報WG(Scientific Information WG)
- 労働組合コーカス(Trade Union Caucus)
- テレセンター(Telecentres)
- ボランティアと新しいITについてのWG(WG on Volunteering and New ITs)
マルチステイクホルダー・コーカス(Multi-Stakeholder Caucuses) †
- ジェンダー・コーカス(Gender Caucus)
- 青年コーカス(Youth Caucus)
第1フェーズの展開 †
市民社会からは、コミュニケーションの権利、表現の自由、そし
て情報の不平等の解消(WIPO、TRIPsの枠組みの見直し)などが重要課題として提
起したが、先進国、途上国ともに各国政府は消極的で、第1フェーズでまとめ
られた宣言文にはこれらの課題はほとんど触れられていない。
第2フェーズの展開 †
第1フェーズで合意ができなかった以下の2つの問題が議論の中心。
- インターネット・ガバナンス(インターネットの調整管理)
当初はICANNという、インターネット上のドメイン名とIPアドレスの配分
などを管理する組織に関わる議論だったが、次第に定義が拡大され、コンテンツ
の管理(規制)、セキュリティ、サイバー犯罪、スパム、社会的包合(社会的課
題と多様な視点の共有)、消費者、利用者の保護とプライバシーなどの問題も議
論の対象にしようという流れ。
インターネット上の情報の管理や監視を強めようという動きの中で、知識や情報
の自由な流通や市民的自由をいかにして守っていくかが課題。
- 財政機構の問題
グローバルなデジタル・デバイドを解消するために、アフリカを中心とする途上
国から提案されたデジタル連帯基金などが議論されている。
さまざまな情報がデジタル回線を通じて配信できるようになった世界では、その
仕組みや基盤を維持する技術と経済が大きな意味を持つ。技術力や経済力の差が
そのまま情報の格差につながり、それがさらに技術力や経済力の差の拡大につな
がるという悪循環を断ち切る必要。先進国と途上国、そして特に途上国内の都会
と地方の情報インフラの格差を解消し、人的資源、知識の開発に取り組むために
は、途上国の人々のニーズを十分に反映するために、途上国主導で進めること
が重要とされる。
上記の二つの問題とつながっていながらWSISの議論では表面化していない問
題として、インターネットの国際回線の費用負担の問題がある。
たとえば電話の場合、国際電話の料金は国際精算料金という制度により
精算され、一般的に発信量の多い先進国から途上国にお金が流れるしくみ
ができている(ただし米国は97年に一方的に精算料金の引き下げを強行)。
インターネットに使うネットワークは高速デジタル専用線を使用しており、
精算料金の制度の対象外。
インターネットのネットワークは米国を頂点として、いくつかの先進国が直接米
国と回線をつなぎ、その下に中進国、途上国と、階層構造をなしている。米国は
インターネットの国際回線の費用を全く負担せず、米国とつないだ側が百%負担。
米国以外の二国間の回線の場合は、米国に遠い側が百%負担。
このようにしてインターネットの利用料金が米国を中心とするネットワー
クの末端から中心の米国に流れる仕組みができあがっている。これまで
米国に対して応分に負担を求める動きは再三なされたが、実現のめ
どはなし。インターネットを地球公共財とみなし、その維持にかかる費用を
誰がどのように負担するのが公正といえるのかを議論する必要がある。
人権に関する議論 †
背景 †
- 1996 米国通信品位法(CDA): インターネット上の表現の自由の、歴史上
最大の危機
→ACLUなどが違憲として提訴し、翌97年に連邦最高裁において差し止め判決
- 2001 「911」以後、テロとの戦いを理由に、各国でネット上のコンテンツ
規制や監視が強まる。
- 2001 欧州評議会(Council of Europe)サイバー犯罪条約(Convention on Cyber crime)
2001年11月8日 ストラスブールで作成
2004年4月21日 日本政府国会承認
2004年7月1日 効力発生
WSISでの議論 †
行動計画に示されている対策案はインフラ整備に重点が置かれ、人間や
社会・文化の開発、民主主義に関してはあいまいな言及に留まり、特にプ
ライバシー保護については関心が払われていない。
また、国際的な人権条約を批准した国の法律上拘束力のある義務を守る
代わりに、法の支配および規制の枠組みが「国の実体を反映する」ことと、
恣意的な運用を許す表現になっている。
【参考文献】 †
- 浜田忠久、小野田美都江『インターネットと市民 −NPO/NGOの時代に向けて−』
丸善、2003
- 北田暁大、団藤保晴、浜田忠久、「言論」の場をどこにつくるか 〜ネット・
ジャーナリズムの可能性『世界』2005年1月号、岩波書店
- 浜田忠久「情報は誰のものか」コンピュータ・ネットワークでつながる市民『Volo』(ウォロ)2004年6月号、大阪ボランティア協会
- 浜田忠久「世界情報社会サミット(WSIS) 準備会議に参加して」『人権新聞』自由人権協会、2005.3